2017年12月3日日曜日

手平



 















イスラム教の団体が、ジャカルタにあるモナス広場で大規模集会を開いた。

日本で言えば代々木公園みたいな首都にある市民の憩いの場。広さは約80ヘクタール、中心には高さ130メートル超の独立記念塔(Monumen Nasional:略してMonas=モナス)があり、展望台からはジャカルタが一望できる。

広場にはもちろん観光客も訪れる。つい最近まで敷地内での宗教活動などは禁じられていたが、イスラム寄りの新知事が知事令を出し、この制限から広場を開放、今回の集会はジャカルタ主催の前週の集会に続く2回目の集会だった。

集会のテーマは「同窓会」。何の同窓会かというと、イスラムの聖典コーランを侮辱するような発言をして失脚したアホック前知事に対するデモに参加したメンバーたちの集会。

アホック前知事へのデモは昨年の昨日、つまり同じ12月2日に開催された。この時、全国各地から参加者を乗せたバスが乗りつけて最終的に20万人が集まったとされている。集会には「Reuni Almuni(レウニ・アルムニ)212」とタイトルが付けられている。

外語大の辞書によれば、レウニは「旧交を温める集い」。ことしの知事選で結果的に勝利を収めたイスラム側が、デモから1年経過したので会いましょうという感じの集まり、と様子を思い描いていたら、「アッラーフ、アクバル!」を連呼したり、「ジハード」を口にする場面もあった。

広場では午前3時50分ごろから集団礼拝が始まり、朝には東南アジア最大規模のイスティクラル・モスクで同時刻に礼拝していた人が集結。正午ごろまで一緒にお祈りをした後、掃除をしながら帰途に着いた。

今回の警察発表の参加者推計は3万人。一方、主催者側は750万人という、突拍子もない数字を発表。学者はせいぜい70〜80万人が広場のキャパシティから見ても限度としている。

さらに、主催者側は「ゴミを拾いながら帰りましょう」と参加者に呼びかけ、持参したビニール袋に「自分たちで捨てた」ごみを拾った。広場や公園の利用者であれば当然の行為を、あたかも「私たちは良い行いをしています」と宣伝している。市民団体の地道な清掃活動とは全く性質が異なるのにだ。

さらに最終的に集積場まで運ぶのは、アホック前知事が月額の最低賃金を保証したジャカルタの清掃員。誰がこの体裁だけの活動を見て喜ぶのだろう。反対に、誰のはらわたを煮えくり返らせているのだろう。



きっと社会で生きていくためには、誰かしらの手のひらの上で動かなければいけない。しかし、今回は外人にとっては居心地の良いとは言えない「手」になったのではないだろうか。

黒い筋がかかった沈みかけの月が、何とも言えない不気味さだった。