海の向こうに、ふるさとがある。
不意に懐かしくなって、走り出した。
日没には間に合わなかったから、
見えなかったけれど。
この向こうにふるさとがあると思うと、
また歩き出せる、そう思った。
昇った月は、いつもより赤くて、
目を離すことが出来なかった。
息を呑む程の、言葉を失う程の。
大自然の中で、出会うからこそ
想い出に残る、景色がある。
色がある。
心が乱れたら、自然に還ってみる。
太古から続く、場所があるんだから。
何もなかったけれど
何かあった。
形の無いものなんて
見つけられないと
思っていた。
独りよがりの幻影かもしれないけれど
強く信じられる自分がいた。
言葉にならない
犬の吠える声のように
力強い想い。
ふと、感じる違和感。
すっきり収まっているようで、
何か、ちぐはぐの靴下を履いているような
そんな違和感。
結局は後で笑い話にでもなるような
小さいことに、いつまでも惑わされて。
そうやって今を生きている。